@un_underscore: 『1時間だけ、ライン解除してほしい』元カレのBeReal にコメントを付けた_ 30分後、ラインが来た_ スタンプひとつだけだったから、私はテスト勉強を止めてベッドに横になった_ ベランダから漏れる明かりを眺めながら、なんて返そうか親指を悩ませた_ 『あのね、おばあちゃん覚えてる? 中学のときによく会いに行った糸島のおばあちゃん、おばあちゃんがさ、入院しててさ、なんかあんたに会いたいって、私たちが別れたことは言えてなくて、どうしようかなって』 スマホを天井に向けて、私は打ち込んだ文字を口に出して読んでみた_ 「会ってあげてほしいんだけど、どうかな……」ちいさく、つぶやいた_ 目を閉じて、スマホを胸に当てた_ 息を整えて、送信ボタンを押した_   「お、いた」後ろから声がして、振り返ると彼がいた_ ふたりのあいだを幼稚園児が駆け抜けて、彼がすこしだけ笑みを浮かべた_ 病院からすこし離れた公園には、大きな噴水があった_ そこの前で、彼と待ち合わせをした_ 「久しぶり」 「うん、なんかごめんね」 「ううん、おばあちゃんどうしたの?」 「去年の夏頃かな、自宅の玄関で転んじゃって、そこから半年くらい入院してる」 「そっか」 彼は頷きながら「どっち?」と、公園を見渡した_ 「こっち」私は、団地のほうを指差して歩き出した_ 「それにしてもさ、俺が最後に糸島行ったのって1年前とかだよね? よくおばあちゃん俺のこと覚えてたね?」 「うん、なんかね、おばあちゃん入院してから認知症っぽくなっててね、それなのにあんたのことだけはまだ覚えてるみたいで」私は、横断歩道の押しボタンを押した_ 「そっか、なんかうれしいな」 彼は、信号を見上げながら笑った_ 「やっと最近、春らしくなってきたね」 「うん、ニット着て来たの失敗だった」 「俺も、ヒートテック着てるからめっちゃ暑い」 団地を抜けると、遠くに病院が見えた_ 「それ、わざわざ買って来たの?」 私は彼の右手を指差した_ 「うん、いちおう花を買って来たけど、花瓶とかある?」 「うん、あるよ、きっとおばあちゃん喜ぶと思う」 それから彼と、おばあちゃんの病室に向かった_ 向かってる途中、彼は仕切りに花を気にしていた_ その度に私は、彼の横顔を確認した_ 別れてから2ヶ月、彼はすこしだけ大人っぽく見えた_ 高校はどう? とか、新しい彼女とはどう? とか、聞きたいことは山ほどあったけど、いまは聞かないでおくことにした_ 「わあ、身長伸びたね」病室に入ってすぐ、おばあちゃんが彼の名前を呼んだ_ 手を叩いて、私たちをベッドのそばに座らせた_ 「お久しぶりです、お花持って来ました」彼は笑みを浮かべて、花をおばあちゃんに見せた_ それから私が花瓶に水を入れに行っているあいだ、彼はおばあちゃんと話をしていた_ 「聞いたよ、ふたりとも高校離れたんだってね」 私が花瓶を窓際に飾ると、おばあちゃんが背中を叩いた_ 「うん、そうなの、だから今日は久しぶりに会ったの」私はそう言って、彼の目を見つめた_ 「ね?」 「うん」彼は目を細めて、おばあちゃんと目を合わせた_ 「ほら、あの前にくれた写真、そこの引き出しに入ってるよ」おばあちゃんはそう言って、引き出しから写真を取り出した_ 「ああ、BeReal のスクショのやつだ」私は写真に顔を近づけた_ 「うわ、懐かしい」彼も写真に顔を近づけた_ 写真には、私とおばあちゃんが顔を寄せ合っていて、その後ろで彼が親指を立てていた_ 「なんかふたりともまだ中学生って感じだね」私は笑いながら、彼の横顔と比べた_ 「うん、なんか糸島の空気思い出す」 それからおばあちゃんと折り紙を折りながら、2時間くらい中学のときの話をした_ 「じゃあ、おばあちゃん、ちょっと見送って来るね」 「はあい、またね」 おばあちゃんは彼に、折り鶴を渡した_ 「また、来ます」彼はそう言って軽く頭を下げた_   「今日はありがとね」 「ううん、ずっと勉強ばっかしてたから、久しぶりにこういう日を思い出せてよかったよ」 病院の前で彼は、折り鶴を手に遠くを見つめた_ 「なんか、このあとご飯とか奢ろうか? お腹空いてる?」 「んん、いやいいかな」彼は笑って、スマホを確認した_ 「そっか、じゃあまたなんかあったら連絡するね」 「うん、そうして」彼はスマホを閉じて、私に目を向けた_ 「あ、でもさ、ラインのブロック」 「あ、そうだった、繋げとくのはこれまで通りBeReal だけにしよ」 私はそう言って、スマホを見つめた_ 「さっきさ、3人で撮ったBeReal 送ろうか?」彼はスマホを開いて、画面をスクショした_ 「はい、エアドロするよ」 差し出された彼のスマホに、私はスマホを近づけた_ 「ありがと」 「ううん、もしさ、彼氏が嫌がりそうなら消していいからね」 「え、やっぱりこの前の水族館のやつ見たの?」 「うん、クラゲと撮ってたね」 彼は、私の目を見つめて笑った_ 「ええ、見たならさ、なんかリアクションしてよ」 私は、スマホを揺らした_ まだ付き合えてないとは、言えなかった_ 「じゃあ、そろそろ行くね」彼がスマホを、顔の横で軽く振った_ 「うん、勉強頑張ってね」 「うん、元気でね」   それから私は病院に戻って、おばあちゃんとすこし話をしたあと、帰り道の途中で肉まんを買った_ 公園でさっき貰った写真を眺めながら、肉まんをひとくちだけかじった_ 「あ、これ」私は、画面に顔を近づけた_ 端に触れると、丸い粒の花が、ピンク色の頭を寄せ合っていた_ その花の名前を、私は1文字も思い出せなかった_ ただひとつ、 ずっと前に、昼下がりの公園で、芝生に寝転がった彼が口にした7文字の花言葉、 『この花、俺らみたいだね』 それだけは、親指の先に残っていた_   あたたかい陽だまりの中で、 彼が教えた色あせない花言葉だけが、 優しく光を放っていた_                                  

空白代行
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Saturday 07 February 2026 11:03:30 GMT
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Comments

mika05292
おのさんです :
誰か花の名前教えて😭
2026-02-11 09:08:40
16
vjfuey
⠀ :
花言葉は、色あせぬ愛、変わらぬ愛情、永遠の恋。ドライフラワーにしても色や形が色あせない性質が由来らしいです。
2026-02-15 00:11:10
53
iseri__i
れ :
😭😭😭
2026-02-07 11:08:01
8
jinhuasakura
kinka :
こんばんはおはよう優しいですね🥰🤗🤗
2026-02-07 14:42:13
8
ayaaa_.0803
￴ ￴￴ ￴￴ ￴￴￴￴￴ ￴ ￴ ￴ :
続き待ってました😭💗
2026-02-07 11:16:10
7
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