@un_underscore: お母さんに「彼氏と別れてきた」って言ったら「一緒お風呂入ろ」って言われた_ 10年ぶりに、お母さんとお風呂に入った_ 私が浴槽に浸かっていると、「ネイルぼろぼろすぎない?」って、お母さんは洗顔をしながら笑った_ お風呂から上がると、テーブルの上には8色のマニュキュアが並べられていた_ 「ほら、塗り直すよ」 お母さんが肩を寄せてきて、私はスマホを閉じた_ 「また彼氏見てたでしょ?」って、お母さんは私の小指をつついた_ 私はスマホをテーブルに置いて「もう彼氏じゃないし」って、前髪をピンで止めた_ 「はやく選んでよ」 カラフルな瓶の中には、彼がいつも部活で付けてたリストバンドのオレンジがあった_ 「これにする」 私は、ミルク色の瓶をつついた_ 「あんたにしては、地味なやつを選んだね」 お母さんは笑って、除光液を手にした_ 「はい、まずは綺麗にするよ」 お母さんの手はカサカサしてて「なんかくすぐったいよ」って私は、眉間にシワを寄せた_ 「動かないでよ」 除光液の匂いがひろがって、私の爪がもとのピンク色に戻った_ 「じゃあ、新しい色塗りますね」お母さんはそう言って、私の爪をミルク色に染めた_ 優しい色が、私のほほに涙を流した_ 両手が使えない私のほっぺを、お母さんは両手で包んで「乾くまではじっとしててね」って、私のまぶたを親指で撫でた_ スマホが震えて、ラインの通知音が鳴った_ 画面には『俺のイヤホン、間違えて持って帰ってないよね……』と、彼からメッセージが来た_ お母さんと目が合って、私は「いまは確認できないね」って、塗りたてのネイルを見つめた_ お母さんは笑って「ええ、急ぎじゃないの?」って、スマホに顔を近づけた_ 「ねえ、あんま見ないで」 「あんたたちさ、ほんとに別れたの?」 お母さんはそう言って、私のスマホに触れた_ 待ち受けには、チュロスを咥えた彼の横顔が映っていた_ 「さっき、変えようとしてたの」 私がそう言うと、お母さんは「ええ」って、ニヤニヤしながら立ち上がった_ 彼のラインのトプ画は、カチューシャを付けた私の後ろ姿のままだった_ 「今日は、お母さんが皿洗いするね」 お母さんはエプロンを付けてキッチンに向かった_ 私は、お母さんの背中を見つめた_ やっぱりお母さんの背中は、前よりも細くなっていた_ お風呂のときも思ったけど、お母さんはこの数日であきらかに痩せ細っていた_ おととい、見つけてしまった1枚の診断書_ 『子宮頚がん』 怖くて検索はしなかったけど、もうお母さんとは長くいられないかもって、それだけしか考えられなくなった_ 授業中も考えてしまって、彼氏といてもうまく笑えないから、今日、彼氏にお母さんのことを相談した_ そしたら彼氏は、俺のことはいまはいいからって、来週予定していたディズニーのチケットを取り出した_ 『いまはとにかく、お母さんのそばにいるべきだよ』 そう言って彼氏は『お母さんとさ、ディズニー行って来なよ』と、チケットを渡した_ 『お土産、待ってるから』 優しく微笑む彼氏を、私は何も言わずに抱きしめた_ キッチンで、お母さんのエプロンが揺れていた_ 中学のときに作った、ミルク色のエプロン_ 「ねえ、お母さん」 私は、エプロンの紐を引っ張った_ 「んん?」お母さんは食器を拭きながら、横顔を見せた_ 「ディズニー、行かない?」 お母さんは手を止めて「え、3人で?」と、笑った_ 「違う、お母さんとふたりで」 「ええ、彼氏と行きなよ、仲直りするんでしょ?」 「ううん」私は、お母さんの目を見つめた_ 「彼氏とは、別れてないよ」 お母さんは笑って「やっぱり?」って、私の前髪をぐしゃぐしゃに撫でた_ 「そんな嘘つかなくても、一緒にお風呂入ったのに」 「ううん……」私は、お母さんの手に触れた_ 「いまは、お母さんといるのがいちばんだから」 ミルク色の爪が、お母さんの手の中で光った_ 視界がぼやけて、お母さんの鼻がおでこに触れた_ 「大人になるのはまだ早いよ」 お母さんの笑った息が、まつ毛を揺らした_ 「ちょうどいま有休とってるし、お母さんも来週は大人をやめて、ディズニーではしゃいじゃおっかな」 お母さんと目が合って、私は笑った_ 「じゃあ、お母さんもカチューシャつけてね」 「あたしが?」 「うん、私とお揃いのやつ」 「どうせさあ、写真とか撮るでしょ?」 「うん、彼氏にも見せたいし、インスタにも上げるよ」 「ねえ」 お母さんは、くちびるをとがらせた_ 「ディズニー行くときもさ、お母さんがネイル塗り直してね」 私は、お母さんのくちびるに指を当てた_ 「あ」 「ねえ、いま鼻に付いたよね」 お母さんの鼻が、ミルク色に染まった_ 「ねえ、あんたにも付けさせて」 「わざとじゃないって」 お母さんと久しぶりにリビングで追いかけっこをした_ 「ほらほら、こっち向きなって」 「ねえ、待って汗かくって」 ソファに倒れ込むと、お母さんが飛びついて来た_ 「はい、捕まえた」 お母さんの手が、私の手に触れた_ 「まだまだ子どもだねえ」 「お母さんだって」 塗り変えたミルク色のネイルが、 またふたりのことを笑わせてくれた_
空白代行
Region: JP
Tuesday 03 March 2026 11:15:33 GMT
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Comments
は :
トイレで💩出しながら目から涙も出てきました
2026-03-04 10:40:40
11722
ミユ :
いや天才すぎる、今日お母さんと買い物行くからプリ撮ろって言ってみようかな笑笑(もう23歳と60歳)
2026-03-03 22:22:41
5799
. :
ほんまにママが死ぬの想像しただけで泣ける大好き死なないで
2026-03-04 15:05:54
5312
あやね :
彼氏さんがすぐお母さんとディズニー行っておいでって言えるのもすごい
2026-03-03 14:20:49
5473
ゆりこんぐ :
ママ大好きだよ
2026-03-04 07:31:57
2218
ぽち :
映画見てるわけじゃないのにこれは文章読むだけで泣けるのほんとにすごい
2026-03-03 12:11:56
3541
☆☆ :
お母さんも彼氏も大切にします
2026-03-03 16:24:09
620
りんご💕🫶🏻 :
結局、自分のこと1番知ってるのは母親なんよな
2026-03-04 09:14:07
459
EI :
母親って、口うるさくて鬱陶しいとか嫌いとか思っても、たとえ99%嫌いだとしても、やっぱり残りの1%の愛に勝てるものは無いのかもね。愛しているよ。
2026-03-04 13:59:54
569
れお :
親って偉大だな。中学の頃「〇ね」って1回だけ言ってしまったこと、成人してもずっと後悔してる。
2026-03-03 16:23:28
999
RUNA :
大号泣した😭やっぱ家族愛に1番弱いな自分が家族大好きな人やから余計に
2026-03-04 14:40:40
41
ぱんねこ :
一人暮らししてからホームシックじゃなくてままシック
2026-04-29 23:35:29
16
🌙🪼 :
まま愛してるよいつもありがとう長生きしてね
2026-03-09 06:33:50
15
. :
こういうの見るとママには長生きしてほしいって思う
2026-04-06 10:22:17
13
りな。🧁💛 :
フィクションですよ、ね?だとしたら作るのが上手すぎます、
2026-04-28 21:32:13
13
つばまめ :
涙とか出そう
2026-05-01 04:49:15
5
お腹空いた :
下までスクロールしたら背景の景色だけになるのもエモい。
2026-03-07 08:49:27
12
N :
素敵すぎて全部見てしまった
2026-03-06 10:44:23
9
Uka🍒🎯 :
一人暮らししたてのうち大号泣
2026-03-04 12:34:11
751
︎︎. :
これ読んでたら泣ける
2026-03-04 08:54:23
26
らいる :
ママ、あと百年は生きてね??
嫌いだけど大嫌いだけど、好き。やっぱり99%の嫌いがあっても、1%の好きには勝てないんだなって感じる。ママのご飯おいしい!いつもありがとう!✨
2026-03-04 19:42:42
34
⋆.˚𖦹⋆✮⋆.˚ :
親ってすごいよね。怒られたり、なんか言われたら、(うるさい)、(わかってるから 💢)、(もう嫌い、)とかって思うのにさ、数分後には仲良くて、一緒に笑って、その時間がどんどんすぎていくのが悲しくなっていくんだよね、
2026-03-07 14:10:12
62
いちか :
やばいボロ泣き。だいすきだからママのこともっと大事にしようって思えた。
2026-03-10 09:56:08
7
きのこ :
お母様ここまですみませんでした…
2026-03-06 09:44:45
7
𝑆 𝑒 𝑛 𝑎 𓂃 𓈒❤︎ :
初めて長い文章を最後まで読みたいと思った😢
2026-03-05 08:02:25
7
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